日本で初めて弱冷房車が登場したのは1984年のことで、近畿の京阪電鉄が導入したものが最初と言われています。
女性客を中心に強すぎる冷房が苦手な人たちからの要望を受けて誕生したこの弱冷房車、他の各鉄道会社も追随して導入となり、今では当たり前のものとなっています。

さて、ここで疑問。

冬の弱冷房車はどうなっているのでしょうか?

冷房をつけている夏場の弱冷房車は、設定温度が他の車両より2℃ほど高くなっています。これは大体どの鉄道会社も同様。
冷房に弱い人や、冷え症などの方はこの弱冷房車がいいですよ、というもの。

これが暖房が必要になる冬場になると弱冷房車はどういう扱いになるのでしょうか?
他の車両よりも暖房が弱くなっているのか?それとも暖房が逆に強くなっているのか?

冬場の電車内は状況によっては地獄と化します。
凍えるような街中を歩いて電車に乗ったと思ったら、満員電車による熱気でムンムン。
コートを脱ぐにも脱げない状態で汗ダクダクになりながら乗車していることも多々あります。
そんな時に、ふと弱冷房車なら快適なのではと思ったこともあるけど、結局良く分からないのが現状です。

冬場の弱冷房車の取り扱いについて、首都圏の主要鉄道会社に質問してその実情を調べてみました。

冬の弱冷房車について各鉄道会社の回答は?

今回、質問をぶつけたのは首都圏を網羅するJR東日本、東急電鉄、小田急電鉄、東京メトロ、京王電鉄、西武鉄道の6社。毎日、多くの人々を乗せる通勤通学の要となっている鉄道です。
それぞれの回答を要約して下記にまとめてみました。

JR東日本

弱暖房車のような機能はないが、より快適な車内環境の提供に努めてます

JR東日本では、弱冷房車は冷房使用時のみの取り扱いであるとのこと。つまり冬場の暖房使用時の弱冷房車は他の車両と同様の設定です。
ちなみに、JRの新しい車両では、室内の温度・湿度や車内の混雑度・外気温度をセンサーで連続的に検知し、車内が一定の温度となるように車両毎に冷房・暖房の入り切りや送風・換気をコンピュータで自動制御しているとのことです。

東急電鉄

冬場、暖房使用時の弱冷房車は他の車両と同じです

かれこれ15年以上お世話になっている東急さん。弱冷房車は冷房使用時は冬季も夏季と同様の設定温度であるが、暖房使用時は他の車両と同様の温度設定になっているとのこと。

時期に関係なく、冷房の時は弱冷房車として機能するが、暖房使用時は弱冷房車も含め全て一定になっているそうです。

小田急電鉄

暖房設備に関しましては、弱冷房車も他の車両も設定の変更はありません

小田急さんも同様です。
車内冷房設備は26℃設定、2号車の弱冷房車は28℃に設定して自動運転により稼動。暖房設備に関しては、車両による設定の変更はなく、車掌が車内の混雑状況や外気温などを総合的に判断しながら空調機器の取り扱いを行っているとのこと。

東京メトロ

冷房使用時以外は、弱冷房車と他の車両の車内温度の違いはございません

首都圏中心部の地下を駆け巡る東京メトロさんの社内空調は、基本的に夏場・冬場問わず年間を通して26度(弱冷房車は28度)に設定しているそうです。
外気温や車内の混雑度を考慮しながら、乗務員が「入・切」を行っています。
冷房を使用しているとき以外は(暖房ヒーター使用時など)は弱冷房車と他の車両の車内温度の違いはありません。

京王電鉄

暖房使用時の温度設定は弱冷房車含め全車両同様です

そろそろ、上記の結果からある程度結論は見えてきたかと思いますが、京王電鉄さんも暖房使用時の温度設定は全車両同様となっているようです。利用時の状況(乗車率・外気温・車内温度等)に応じセンサーにて自動で調整されているとのこと。

西武鉄道

温度設定は19度で全車両設定温度は同じです

やはり西武も同様でした。
冷房機と暖房器の制御は別々となっていて、冬場の暖房は温度を19度に設定してセンサー管理しているそうです。ということなので、冬場の暖房使用時は弱冷房車も含めて全車両設定温度は同じ。

【結論】冬場の弱冷房車は他の車両と同じ

途中からある程度結論は見えていたかと思いますが、
冬場の弱冷房車は他の車両と同じ空調設定であると考えていいでしょう。

正確には、冬場夏場とかはそれほど関係なくその時の外気温やお客さんの乗車状況等に応じて空調を調整しているようです。
その中で、暖房使用時には弱冷房車が弱暖房車のようになるわけではなく他の車両と全く同様の設定であるということ。

弱冷房車は弱暖房車にはなりませんのでお間違いなく!

今回、この冬の弱冷房車の取り扱いを調査して分かったことは、どの鉄道会社も空調に関してはまだまだ課題が残っているということ。
乗客の個人個人、その時の気温をどのように感じるかは千差万別であるが故、全ての人に快適な車内環境を提供することは非常に難しい問題であるようです。

サムネイル画像出典:By nichols-villa (IMG_20141111_241753117_HDR) [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons