忙しいサラリーマンの味方と言えば、安い・早い・旨いの3拍子揃った「立ち食いそば屋」。
そんな立ち食いそば屋で「通」が頼むメニューの王道と言われるのが「コロッケそば」。
その名の通り、温かいかけそばにコロッケを乗っけただけのメニューではあるが、その人気は天ぷらそばをも凌ぐほど。立ち食いそば屋に行ったらコロッケそばしか頼まないという猛者がいるほどの中毒メニューといってもいいかもしれません。

度々、コロッケそばの肯定派、否定派による論争も繰り広げられてるようですが・・・
俺は完全に「否定派」!!

18歳で上京してからというもの、数百回以上は立ち食いそば屋に出向いたことがあるでしょう。しかしもともとコロッケという食べ物に興味がないためコロッケそばの存在を見て見ぬふりをしていたんです。
まぁ一部のマニアが頼むのかもなと。

しかし、これだけ長い間立ち食いそば屋を利用していると嫌でも耳に入ってくるのがコロッケそばの話題。
・一緒に行ったツレが
「コロッケそば食べたことないの?めちゃめちゃ旨いよ」
・カウンターの隣のサラリーマン2人組が
天ぷらそばなんて素人が食うもんだよ。コロッケそばにしなって!」「マジで~?」
こんな押し問答的なやり取りも正味5~10分程度の滞在の中で腐るほど耳にしてきた。

そして、ついに意を決したのが齢30を手前に迎えたあたりだろうか、今まで食べることのなかった、いやむしろその存在を無視し続けてきたコロッケそばと対峙するときがあったのです。
こだわりのある食べ方もあるらしいが、その時は知らなかったので自分の思うがままに食したんです。
(ただでさえ、時間経ったコロッケのふにゃふにゃ感が嫌いなので、出来る限りスープに浸さないようにして)

「何じゃこりゃ、不味い!」

食べ物と食べ物を組み合わせるときは、1+1=2以上にならなければいけないのに、コロッケそばは1+1=1+1、もしくは1+1=1以下だ。
コロッケを乗っけたことで「コロッケそば」になったわけではなく、「かけそばとコロッケ」なわけです。

それでも、コロッケそばが一部の通の間では神格化されていること自体は間違いない。この旨さが分からないままでいるのは非常に悔しいので、この機会にコロッケそばに詳しい人物に話を聞きつつ、正しい食べ方で再チャレンジしてみました。

立ち食いそば通が語るコロッケそばの魅力

ちなみに、コロッケそばの起源は小田急沿線で展開している箱根そばが昭和50年代頃にメニュー化したと言われていて、東京を中心とする関東圏にしか定着していないメニュー。
しかしルーツは銀座のそば屋「よし田」であるとか、実は大阪が発祥であるとかいまいち定かではない。
関東以外ではコロッケそばという言葉自体が通用しないこともあり、必然的にコロッケそば通は東京近郊に多く集まっているわけです。

ということで、今回話を聞いたのは東京で某IT関連の企業に勤めるT氏(男性38歳)。立ち食いそば屋に行ったら9割5分でコロッケそばを注文するというコロッケそば歴約20年の強者。(というか昔からの知り合い。まさかこんな近くにコロッケそば通がいたとは・・)

マスゾー:「コロッケそばとの出会いを教えてください。」
T氏:「あれは確か・・・19歳か20歳のころ、北千住の駅のホームの立ち食いそば屋さんだったね。」

マスゾー:「初めて食べた時から旨いと思いましたか?」
T氏:「衝撃のうまさだったね。それまでは、かき揚げそばやら天ぷらそばを頼んでいたんだけど、たまたま頼んだコロッケそばが、これほどまでに人生に影響を与えるってすごいでしょ?」

マスゾー:「コロッケそばの正しい食べ方ってあるんですか?」
T氏:「正しいかどうかは別として、コロッケに汁を十分に染み込ませると、衣の油が溶け出しでいい具合なコクとうまみがでるのよ。コロッケをぐずぐずに崩して混ぜる人がいるけどあれは邪道だと思ってる。やっぱりコロッケの存在を消したくはないよね。いい具合に染み込んだコロッケのうまさと言ったら・・・出会って以来、どこに行ってもコロッケそばだね。みんなには「え~」って言われるけど、試しに食べさせたらもうトリコさ!」

マスゾー:「Tさんのおすすめの店はありますか?」
T氏:「う~ん。やっぱりコロッケそばに出会った北千住の駅のホームのコロッケそばはうまかったね。汁も濃くてコロッケの脂っこさとうまく調和してたよ。あとは、箱根そばかな。箱根そばのコロッケは確かカレーコロッケだったと思うよ。すごいボリューミーで学生時代本当にお世話になったね。」

マスゾー:「僕、どうしても苦手なんですけど好きになりますかね?」
T氏:「じゃ食べいこう!」

コロッケそばを美味しく食べるためのポイント

ここで、T氏によるコロッケそばを美味しく食べるためのポイントを紹介。

  • 汁が濃いめのそば屋がベスト
  • コロッケは汁にしっかりとたっぷり浸す

コロッケそばと再び対峙した結果

今回は、たまたま近くにあった「ゆで太郎 南青山一丁目店」で挑戦。
ここはコロッケそばというメニューは無く、かけそばにコロッケをトッピングするというスタイル。
T氏からコロッケ無料のサービスチケットをいただいたので、かけそばの320円だけで済んじゃいました。(さすが立ち食いそば通・・・)

とにかく、今回はT氏の食べ方を完コピ!T氏は汁がたっぷりとしみ込んだコロッケを出来る限り崩さずに食べる派。
ポイントはコロッケに汁を良くしみこませること。これにより、汁のしみこんだコロッケとコロッケの油の旨みが溶けだした汁、そしてそばと絶妙な一体感が生まれ美味になるという。
それを真似て我武者羅に食べた。

結果、「うん、前ほどまずくはないけど普通」
正直、人生2回目のコロッケそばは初めての時よりも悪くはなかったが、中毒になるほど感動する衝撃はやはり得られませんでした。やっぱりまだこいつの存在意義が見出せない。

1+1=2以上になることを期待していたけど、なら別々に食べたほうがまだマシかもと思える自分がいる。
ということで、未だに旨さが分からないまま(恐らく一生無理でしょう)ですが、必ずしも「通=コロッケそば」という法則が成り立ているわけではなく、コロッケそばは通の中の一つの選択肢という言葉をT氏に言われ、僕のコロッケそばへの情熱はこの記事を書き終えるころにははかなくもきれいさっぱり散っていることでしょう